教授挨拶

私たちは、ほ乳類の個体発生・細胞分化におけるヒストンのメチル化・脱メチル化の役割を明らかにすることを目標に研究を進めています。私がエピゲノム制御の研究分野に入ったのは全くの偶然でした。1997年、λファージ発現ライブラリーを使った抗体スクリーニングにより、G9aという機能未知分子をクローニングしました。機能解析は遅々として進まなかったのですが、2001年にG9aがほ乳類の新規ヒストンメチル化酵素であることを明らかにしました。この発見がきっかけでエピゲノム制御の研究にのめり込み、現在に至ります。​

2013年にはヒストンの脱メチル化がマウスの性決定に必須であることを明らかにしました。この研究成果は、“後天的なゲノム修飾がほ乳類のオス化に必須である”ということを世界で初めて示しました。2020年には、“マウスの性決定遺伝子Sryには隠された第2エキソンが存在する”ことを見出しました。これは30年間信じ込まれていた教科書的定説を覆す研究成果でした。これら二つの研究も決して狙ったものではなく、偶然の発見によるものです。予想もしなかった新しい事実を“知ってしまった”時のアドレナリンシャワーは別格です。こういった感覚は5年に一度、あるいは10年に一度しかないかもしれません。でも、一度味わうともう研究者をやめられなくなるはずです。​

立花 誠


いちょう祭2021特別公演「オスとメスが決まるしくみって?」 YouTube

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Thermo NEXT No.59 2021 インタビュー
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